鴻池屋(今成漬物店)の粕漬は、300年以上の歴史があり、江戸時代から現代に至るまでながらく知名の方々・文人たちに愛されてまいりました。明治時代の正岡子規や大正・昭和の会津八一へと連なる鴻池屋と文人とのつながりは、江戸時代、当家十六代・今成喜左衛門まで遡ることができます。


 伊勢の俳人・三浦樗良の門に入った喜左衛門は、俳号を無事庵慮呂(ぶじあんりょろ)といい、句集『雪手向』『雪の峠』を刊行した越後の俳人でした。師匠の三浦樗良をはじめ、京都の与謝蕪村、義仲寺の井上重厚、尾張の加藤暁台、江戸の大島蓼太(雪中庵三世)や完来(雪中庵四世)、加賀の高桑蘭更(花の本宗匠)など、日本各地の俳人たちと広く親交を結び、蕉風俳諧の中興に尽力しました。

 俳人との交友の他にも『東海道中膝栗毛』で知られる十返舎一九、狩野派の絵師の狩野梅笑、文人画の鈴木芙蓉といった、江戸時代を代表する多くの文人や絵師たちが、鴻池屋を訪れております。また、今成喜左衛門は、江戸時代のベストセラー『北越雪譜』(天保八年)で知られる鈴木牧之の義兄にあたります。若き日の鈴木牧之は、姉の嫁ぎ先であった当家で、商売の勉強に励みました。現在、使用されている「錦糸漬」の包装紙は、鈴木牧之の『北越雪譜』の図版を使用しております。

正岡子規

正岡子規

 当家二十代・今成文平もまた子規門下(日本派)の俳人でした。江戸時代の無事庵慮呂にちなんで俳号を「無事庵」といい、のちに吉野臥城から「明治百人の俳人」に選ばれております。今成文平は、魚沼の熊や猪の肉や地元坂戸山の山菜など、折々の物を、鴻池屋秘伝の粕漬にしては、師匠であった正岡子規に、幾度となく贈っております。粕漬が好物だったという正岡子規からは、「無事庵より熊の肉を贈り来る「殊に美味を覚え候」と、お褒めの言葉を頂き、次の一句を寄せて下さいました。

江戸櫻 越後の熊を 肴かな  

江戸桜越後の熊を肴かな 子規

 また、正岡子規とのご縁もあって高浜虚子や河東碧梧桐などの俳人の他、北原白秋、相馬御風、坂口安吾、西脇順三郎、鷲尾雨工、海音寺潮五郎など、数々の文人の方々から風味絶佳と珍重されて参りました。

会津八一

会津八一

 300年以上の歴史のある鴻池屋の粕漬は、昭和の初期、越後の偉大な文人・会津八一秋艸道人)によって「山家漬」と命名されました。歌人でもあり、書家でもあった会津八一先生は、当家二十一代・今成隼一郎の旧制新潟中学の一年先輩にあたります。先生と隼一郎は、十代から俳句や和歌を通じて、生涯親交がございました。ある日、当家に伝わる粕漬を食されたところ、之を大いに称讃され、西行の『山家集』に因んで「越路之逸品 山家漬」と命名、すすんで揮毫して下さいました。

今成漬物店

住所   新潟県南魚沼市六日町1848
電話   025-772-2015
FAX   025-772-2761
営業時間 10:00 – 18:00